確率的視点から見た当たり譜面 -Append Disc-

謝罪

穴冥の当たり譜面が降ってくる確率、 \frac{1}{4}と書きましたが、正しくは\frac{2}{7}です。
現在修正済です。誤った情報を流し、大変申し訳ありません。

1.はじめに

この記事は、確率的視点から見た当たり譜面の続きとなっております。
よって、上記の記事から読むことをおすすめします。



以前の記事の最後に

>今回は、《一度でも降ってくる確率》に注目しました。
>しかし出来ることならば、《二回以上降ってくる確率》《三回以上降ってくる確率》
>もしくは、ピンポイントで《N回降ってくる確率》などを求められれば、それに
>越したことはありません。

と書きました。

今回は、冥SPA(以降:穴冥)の当たり譜面に視点をあて、記事を書かせて頂きます。

2.二項定理

 皆様は、高校数学で『二項定理』というものを学んだ事を覚えていますか。
単刀直入に数式だけ書かせていただきますと
 \displaystyle \mathrm{(a+b)^n=\sum_{k=0}^{n}{}_nC_ka^{n-k}b^k}
が成り立つ。
といったものです。


この記事では、こちらを利用した確率分布『二項分布』を用いて、当たり譜面を考察します。

3. kの確率

 具体例を出してみましょう。
 プレイヤーは1P側なので、1Pサイド視点で記事を進めます。2Pサイドの方、ごめんなさい...

問:穴冥の当たり譜面
 ここで穴冥の当たり譜面を、「2鍵が4,5,6,7のどこか、3鍵が1,2,3のどこかに降ってくるもの」と定義する。
 穴冥は、 \frac{2}{7}の確率で当たり譜面が降ってくる。
 この曲を30回選曲した時、当たり譜面がk回降ってくる確率 \mathrm{P_{30}(X=k)}を求めよ。
 また、当たり譜面がk回以上降ってくる確率 \mathrm{P_{30}(X\geq k)}を求めよ。
 ただし、 \mathrm{0 \leq k \leq 30}とする。

 こちらの問題を解いてみます。
 今回は、数式成分が多くなりますので、ゆっくり読み進めて頂けると幸いです。


 まずは、当たりがk回降ってくる確率 \mathrm{P_{30}(X=k)}から考えてみましょう。
 当たりがk回降ってくるということはつまり、当たりでない譜面が30-k回降ってくるということになります。
 よって、《最初にk回続けて当たり譜面が出て、後に30-k回当たりでない譜面が来る確率》は

  \displaystyle \left(\frac{2}{7}\right)^k \left(1-\frac{2}{7}\right)^{30-k}

 となります。
 しかし、今回は最初にk回当たり譜面が出る必要はありません。30回の試行中にk回当たり譜面が出ればよいのです。
 よって、「30回のうちk回だけ当たり譜面が出る組み合わせの数」を掛けあわせてやる必要があります。
 つまり、当たり譜面がk回降ってくる確率は

  \displaystyle \mathrm{P_{30}(X=k)={}_{30} C_k\left(\frac{2}{7}\right)^k \left(1-\frac{2}{7}\right)^{30-k}}

 となります。
 この式の形、どこかで見覚えがありますよね。そうです。冒頭で紹介した、『二項定理』の右辺の形に酷似しています。
 後は、好きなkの値を代入して計算しましょう。

4. k以上の確率

 では、当たり譜面がk回以上降ってくる確率 \mathrm{P_{30}(X\geq k)}に進みます。
 《当たり譜面がk回以上降ってくる確率》は
 1- 《当たり譜面が(k-1)回以下降ってくる確率》と読み替えてやる事が出来ます。
 実際に数値を入れて考えましょう。

 《当たり譜面が1回以上降ってくる確率》は
 1-《当たり譜面が0回以下降ってくる確率》です。

 《当たり譜面が2回以上降ってくる確率》は
 1-《当たり譜面が1回以下降ってくる確率》です。

 文字で書くと難しい印象がありますが、実際には至極当たり前のことです。

 では、ここで数式の出番です。
 例として、《当たり譜面が4回以上降ってくる確率》を考えます。
 ここで、《当たり譜面が4回以上降ってくる確率》を \mathrm P_{30}(X \geq4)と置きます。
 先ほど述べたとおり

   \displaystyle \mathrm{P_{30}(X \geq4)=1-P_{30}(X \leq 3)}

 となります。ここで  \displaystyle \mathrm{P_{30}(X \leq 3)}は《当たり譜面が3回以下降ってくる確率》です。
 では、 \mathrm{P_{30}(X \leq 3)}とはなんなのでしょうか。
 至極簡単なものです。

   \displaystyle \mathrm{P_{30}(X \leq 3)=P_{30}(X = 0)+P_{30}(X = 1)+P_{30}(X = 2)+P_{30}(X = 3)}

 と、単純に3回、2回、1回、0回の和を取ったものです。
 つまり、以下の様に書くことが出来ます。

   \displaystyle \mathrm{P_{30}(X \leq 3)=\sum_{i=0}^{4-1}P_{30}(X = i)}
 
 この事から、《当たり譜面が4回以上降ってくる確率》については、以下の等式が成り立ちます。
 
   \displaystyle \mathrm{P_{30}(X \geq4)=1-\sum_{i=0}^{4-1}P_{30}(X = i)}

 後はこれを計算してやるだけです。

5. グラフ化

 今回は、4回なのでそれほど計算は面倒ではありません。しかし、これがもし10回、11回となってきた場合とたんに計算は面倒になります。
 ここで、少しコンピューターの力に頼ってみましょう。

 excelを使用し、作成した表を下に乗せます。
 小数点下三桁まで載せています。見苦しい点、ご容赦下さい。

   Table. 選曲回数と確率の関係
f:id:sig49san:20141210215359p:plain

 21以上は限りなく0に近い値のため、ここでは20回までとさせて頂きました。
 また、グラフにプロットした値がこちらになります。

f:id:sig49san:20141210220035p:plain

 こちらの表、グラフを見るに問:穴冥の当たり譜面の解は分かります。

 解:穴冥の当たり譜面。
 表、グラフを参考。
 一例として、当たり譜面が4回以上降ってくる確率は、98.6%である。

6.期待値

 期待値という言葉、割と馴染みのある言葉です。
 今回の試行、期待値という点で見てみた場合、おおよそ 30 \times \frac{1}{4}=7.5となります。7.5回、つまり7~8回くらいは降ってくるんじゃないかな。と想像出来ます。
 それを意識したうえで上のグラフを見てみましょう。
 まず、 \mathrm{P_{30}(X=k)}のグラフです。
 確かに、8回周辺で最大の値を取っています。おおむね期待値通りの値です。
 
 次に、 \mathrm{P_{30}(X\geq k)}のグラフです。
 k=7.5の値を見るに、約70%となっています。
 つまり、外れる可能性も30%ほどあるということになります。
 30%を大きな数字を見るか否かは人それぞれですが、私はとても大きな数字だと考えます。
 つまり
 「期待値が7.5回もあるのだから、7~8回の当たりが降ってこないのはおかしい」
 と考えるのはナンセンスです。30%もある確率を引いただけの話なのですから。

7. 終わりに

 今回は穴冥の当たり譜面に視点をあて、実際どれだけ降ってくるのであろうか。と考察してみました。
 95%以上、を1つのラインと置いた場合、「5回くらいは降ってくるでしょう。」という事になります。
 今回は、穴冥の当たり譜面、選曲回数30回と固定しました。
 しかし実際はもっと色々な選択があります。
 「10回やって7回も3バス引いたんだけど!」や「冥の連打、何回やっても右にしか寄らない!」など理不尽な経験をした方、そう少なくはないのではないと思います。
 そういった事象が、実際どれくらいの確率で起こることなのだろう...と考えてみること。なかなか面白いことだと僕は考えています。
 この記事を見て、そういう遊びに興味を持ってくださる方がいれば、幸いです。
 
 最後に一般化した問題と解答を置いて、〆させて頂きます。
 IIDXをプレイする人にわかりやすいよう言葉を入れ替えてますが、一般的な二項分布の問題です。
 ここまで読んで頂きありがとうございました。



 問:一般化
 当たり譜面がpの確率で降ってくる曲がある。
 この曲をn回選曲した時、当たり譜面がk回降ってくる確率 \mathrm{P_{n}(X=k)}を求めよ。
 また、当たり譜面がk回以上降ってくる確率 \mathrm{P_{n}(X\geq k)}を求めよ。
 ただし、 \mathrm{0 \leq k \leq n}とする。

 解:一般化
   \displaystyle \mathrm{P_{n}(X=k)={}_{n} C_k p^k \left(1-p\right)^{n-k}}

   \displaystyle \mathrm{P_{n}(X \geq k)=1-\sum_{i=0}^{k-1}P_{n}(X = i)}